017 ONO MACHIKO

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PROFILE

INTERVIEW

まずは小野さんが幼い頃、どんな風に過ごしていたかを教えていただけますか?
茅ヶ崎の平凡な住宅地で育ちました。
当時家の近くには畑や草むら、田んぼが沢山あったので、近所のみんなで虫や小魚をつかまえたり泥ダンゴこねたりと外で原始的に遊んでました。雨の日は家にいてもよかったので絵を描いたりゲームをしたり工作をしてました。海までは自転車で行ける距離でしたが1年に1回くらいしか行かなかったです、近いほど逆に行かない感じでした。
そうして原始的な遊びをしていたのは、小野さんや周りの友達だけだったでしょうか? あるいは特別なことではなく、一般的な遊びでしたか?
一般的だったように思います。外に行けば同じように遊んでいる子供もよく見かけました。
今の子供たちにはほとんど得られない、とても幸せな環境だと思います。そうした環境を今どんな風に思い出していますか?
とにかく晴れてる日にだれかの家にいると、どこの親も外にいけと追い出されました。でも外で遊ぶのは楽しかったです。道路にラクガキできる石灰でできた壁を拾いにガレキの山に行って知らないオトナに叱られたり、ボロ屋敷に侵入して大家が追いかけてきて木の棒なげつけてきたり、色々危ないこともしながら、冒険の日々でした。いい思い出です。
逆に雨の日などは家で堂々と遊べたのでちょっと嬉しかったです。中でも絵を描いたりぬりえをするのが好きでした。
余談ですが昨年コミック系イベントに出展した際、他ブースを見て回っていると、私が小学生のとき、とても好きだったぬりえと同じ絵の本を見つけたのです。なんとその作者の方でした。もうお年を召されていて、今は趣味として手作りの本や便箋などを制作されているとのことでした。私がこの絵ぬったことあるんです、と伝えるととても喜んでらっしゃいました。そのぬりえはいつでも見れるよう机の引き出しにしまっているのですが、ときどき見返してもやはり美しく、いい絵です。
いずれも映画のワンシーンのようでとても羨ましいです。ところでカラックスの作品に出演されたということで、個人的にとても楽しみにしています( 「TOKYO!<メルド>」/レオス・カラックス監督作)。撮影現場はどんな雰囲気でしたか? 監督はどんな方でしたか?
さすがに撮影中は緊張感がありましたが、カメラがまわっていないときは役者さんがジョークを言ったり笑いもあって和やかでした。
監督は小柄な方だったのですが見た目も振る舞いもすごくかっこよかったです。注意するとき人差し指を振りながら「チッチッチ」って言うんですが、それがまたさまになっていてステキでした。作品に関してはかなりのこだわりがあるようで、色々指示を出して同じシーンを何十回と撮り直してました。
カラックスの作品は見ていましたか?
ポーラX」のタイトルを知っていたくらいで、予備知識のないまっさらな状態のまま撮影に行きました。いまだ監督がどういう映画を撮られるのか知らないので両方これから観たいと思っています。
最近見た映画で好きなものがあれば、教えてください。
最近あまり映画をみていなくて、観たいものがたまってます。今見ているのは映画じゃないんですが「ダークエンジェル」です。アクションシーンももちろんよいのですが、なによりキャラクターが皆とてもイキイキしていて魅力的です。
映画でも漫画でもその世界をイキイキと描いているものが好きです。うじうじと葛藤している主人公の話を観るともどかしい気持ちになります。少し前にDVDで観たマッドハウスの「時をかける少女」はキャラクターがとてもよく動くので観ていて気持ちよかったです。「パプリカ」も主人公が元気いっぱい、魅力的でとても好きです。
映画出演のきっかけになった「法廷画家」という職業はとても特殊なものだと思います。始めるきっかけはどのようなものでしたか?
きっかけは知り合いのイラストレーターの方が法廷画をかかれていて、話を聞くとホームページに法廷画かきます、と書いたら依頼がきたということだったので私も同じように書いてみたところ同じように依頼がきた、という感じです。最初は法廷画風のイラストの依頼がきて、その後はその実績によって法廷画の依頼がきました。
法廷で描く時はどのような絵にしたいと思って描かれていますか。やはり裁判の内容(自分の思惑や感情)に左右されますか? あるいは、依頼者から指示されるものでしょうか?
被害者の方には申し訳ないのですがその人の罪の有無にかかわらず、美しく描きたいです。本来凶悪犯っぽく描くべきなのかもしれませんが。
どんな人でもモノでも美しさは少なからず備えていると思うので、その感動を自分を通して増幅させて、強調した表現にしたいです。感動に蓋をして、醜く描くことはしたくないです。以前、放送された絵をを見た親から「美化しすぎ」とも言われましたが。
美化癖は中学生ごろから顕著になって自画像を描いても似顔絵になってしまうしクロッキーをしてもみな8頭身にしてしまうしで、よく先生に注意されました。今のところ依頼者から構図等以外の指示はないので自由に描かせてもらっています。
出廷予定の方、是非私にご依頼ください。
サイトに掲載されたたくさんの作品を拝見しました。本当に多種多様の作品でとても楽しめました。「好きなひと・もの・こと」を見ても、いろんなものから影響を受けているように思えます。いろんなものから影響を受けることはごく当たり前のことだと思いますが、自分がわからなくなったり、不安になる要因でもあると思います。自分の立ち位置というか、特に「自分はこういうものです」という何か言葉や感覚はありますか?
あるいはそういうものは必要ないと思いますか?
いつも同じタッチの方の絵をみると、確固としたスタイルが確立していていいなとは思います。でもたとえ結果として不安定でも色々な方法を試したい気持ちの方が強いです。過去に自分がしたことをなぞる自己模倣はとにかく苦痛です。仕事上求められることもありますが、その時は割り切って描いています。
絵にしても何にしても変化を恐れず、どんどん更新してよりよい方法を探していきたいです。無理に過去を引きずって同じ自分を保つ必要はないと思います。その時一番よいと思うこと、したいと思うことををしたいです。
お仕事で描かれているものも素晴らしいのですが、「趣味の絵」の方が個人的には好きなものが多かったです(今回このページに掲載させていただいた作品も全てこれらの中から選びました)。
小野さんにとっては、趣味として自由に描く方が好きですか? それとも人の要望や期待に応えることの方が好きですか? あるいは二つは同じことですか?
自由に描く絵が一番好きです。仕事では普段自分の描くことのないものも描いたり、時間などもバランスも考えるのでとても勉強になりますし、人の要望や期待に応えることで自分を認めてもらえる強い喜びもあります。
でも、一番の喜びは自分自身の要望、欲求に応えることができたときです。それに挑戦しているときの方が気持ちとしても昂ぶっていて、絵に対する思い入れは一層強くなります。それらを好きだといっていただけると本当に嬉しいです。
これからは仕事の絵もさらに喜びを見出せるよう、意識改善をしたいと思っています。

らくがき動画、とても楽しかったです。「下書きをすると絵が堅くなるのでしません」という言葉も印象的です。絵を描く時の気持ちとして、「このイメージを描く」と決める場合と、「描いていったらこうなった」という場合、どちらの形が多いですか? どちらがお好きですか?

線画の場合、下書きをする場合もありますがラフなものにとどめます。カッチリと下書きをすると、クオリティはあがるかもしれませんが、すでに道ができあがっているのでどうしてもそれに従おうとしてしまい減速して安全運転になり、運転しててあまり面白くないです。未開拓の土地をズザザザー、とスリル満点に突っ走るのが気持ちいいです。
なのでとりあえずこんな感じの道ができたらいいな、と走り出して、おお、こんな道になったぞ、というパタンが多いです。
おかげで事故も多いです。思い描く道ができるまで走りなおしです。動画のように、はみ出してもそのまま放置したり、違う形にしてみたりかなりいきあたりばったりです。でもその偶然が面白くて好きです。でもたまにカチカチに下書きをして、いかにその道を正確に運転するかというのも面白いです。
今まで出会った作品の中で一番印象に残っているものは誰の作品ですか? どういう印象でしたか?
伊藤彦造の原画です。あの方は神です、あれだけ緻密で複雑な絵を下書きなしで一気に書き上げるのですから人の技じゃなしえないです。絵から鬼気迫るすごい気迫を感じます。伊藤彦造はご自身の血で絵を描いたり、真剣で稽古をしたり、おかず絶ち(←米と塩と水だけ食す)をするなど彼の精神も、生き様もすごくて。絵師として一番尊敬しています。
あとミュシャのパステル画も印象的です。一般的に知られているあの仕事絵のポスターとは打って変わってプライベートの絵では強い感情をぶつけていて、本当はこっちが描きたかったのかな、というふうに私には思えました。
絵は自分にとってどういうものですか? もし小さい頃と、今とで意味合いが違うようであれば、その辺りのことも聞かせてください。
小さいとき、絵は自分の避難所みたいなものでした。普段親や先生に色々しかられたり、いやなことがあっても絵を描けば無心になれて楽しいし、みんなに褒めてもらえる。絵は安息でした。そこにいると私は護られて、元気になれました。
でもそれでは絵を利用しているだけで、調子が良すぎる気がしました。今でもそういったセラピー的な役割はありますが、あまり逃げたりしないで絵と向き合って大切にしようと心がけてはいます。他の要素としては、何かのオマージュであったり、感情表現であったり、自己表現、挑戦、その時によって様々です。
要素問わず絵に関して共通して言えることは描いていて気持ちよくて、幸せです。

上記は、メールにて何度かやりとりさせて頂いたものをまとめたものです。たくさんの楽しいお話、本当にありがとうございました。(hasegawahiroshi)